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10冬の企画


12月18日にゲスト講義を実施しました。
この日のゲスト講師は、出版社を長年経営されている高澤卲(たかさわ・たかし)さん。
考学舎に通う生徒の「出版関係の仕事をしている方のお話が聞きたい!」
という以前からの希望が叶いました。
文学書出版に40年以上携わっているという高澤さんのお話は、
その半分も生きていない生徒たちの心にどう届くでしょうか。
お話の前にはコミュニケーションゲームを実施しました。

目    的: 自分の将来を考える
日    時: 2010年12月18日 10時から12時まで
会    場: 考学舎(渋谷区渋谷1-7-5-503)
ゲスト講師: 高澤 卲 さん 
内    容: 前半 コミュニケーションゲーム
後半 高澤 卲 さんより、書籍の出版についてのお話
受 講 料: 1,000円 (通年で通っている方は毎月の授業料に含まれています)

コミュニケーションゲーム(9:50開始)

ゲスト講義の前に、毎回簡単なコミュニケーションゲームを実施している。今回はゲスト講義始まって以来の大所帯で、中には「初対面」という生徒もいたため、相手のことを知るためのほぐしゲームと、グループで行うゲームを実施した。

 「バースデーリング」

ゲームタイトルのとおり、誕生日順に参加者全員で輪になるゲーム。ただし、「声を発してはいけない」というルールと、「生年月日=生まれた順で並ぶ」という条件で実施。並んだ時点で順番に自己紹介を行い、作った輪が果たして正しいのかどうかをチェックする。

「ぐるっとストーリー」

参加者を3人4チームに分ける。年代が均等に分かれるように、「バースデーリング」の並び順を活用してチーム分けを行った。全員が原稿用紙を用意し、自由作文で「起」を作成する(7分)。書き終えたらチーム内で順次原稿用紙を回し、「起」に合わせて「承」「転」をそれぞれ作成する(各7分)。「起」を作成した自分の作文が「転」まで書かれて自分に戻り、最後に「結」を書き添え、参加人数分の「短編小説」が完成(8分)。完成した物語の面白さ、文のつながり、表現力の3点で評価する。

ぐるっとストーリー風景

小学4年生から高校3年生、卒業生まで、幅広い生徒が集まる中、世代を超えて和気あいあいとした雰囲気でゲスト講義はスタートした。

「バースデーリング」は通常それほど時間のかからないゲームだが、今回は想定以上に時間がかかった。お互いの学年さえ確認してしまえばいいところを、自分の誕生日がいつなのかを相手に示すばかりで、相手が何歳なのかを気にする者が少なかった。その結果、時間がかかった上に、何箇所かで間違いが発生してしまっていた。

「ぐるっとストーリー」では一人ひとりが真剣に取り組んだおかげでなかなか面白い物語が12編できあがった。各チームから1編を選び、皆の前で発表した。「あれ?話のつながりなんかおかしくない?」など疑問を呈しながらも、それぞれの物語の内容に感心しながら発表を楽しんだ。

高澤さんのお話・質疑(11:15開始)

後半は高澤卲さんからお話を伺った。

高澤卲さん プロフィール

高澤さんは、坂本が幼い頃よりお世話になっていた知人。文京書房という出版社を長く経営されている。詩人であり哲学者である串田孫一氏と共に数多くの文学書を出版されてきた。また、「子ども会」を開催し、本や漢字、勉学の大切さを子ども達に伝えてきた経験があり、考学舎の生徒たちを惹きつける話が展開された。

『本』について

「本」は2通りに分類される。一方は情報・知識を集中的に教えるもの、もう一方は文学書や絵本、詩にあたるもの。

この文学書や絵本、詩集などが、ある時代を境に急激に売れなくなり、情報誌が売れるようになった。これは、例えば同じ雑誌でも、「書評」のようなものを書いている雑誌よりも、「この映画はどこで見られるのか」などの「情報」が集まる雑誌にニーズが高まったことを表している。

「誰かの難しい話を聞いたところで豊かにはならない」というのが一般的な風潮になり、文学系の本を出版する出版社はもはや商売にならなくなっている時代になった、と高澤さん。

出版社について

高澤さん

出版社にも、大手出版社があれば小さな出版社がある。実際に書店に並ぶ本の90パーセント以上は、数千ある出版社のうちのほんの一握りの大手出版社が出版している本であり、高澤さんの経営する出版社は後者である。

小さな出版社は世間への影響は大手出版社ほど大きくないが、その反面、本を出版する人が出したいものだけを出版できる。そのため、いい人に出会うことができるし、「本物」に出会える。それが何よりも大きな魅力だ、と高澤さんは話された。

また、編集・製作から装丁までの工程を、大手であれば分業になってしまうところを、一人、または少人数で行うことができ、出来上がった本を最初に手にできるのが自分だということも魅力の一つだと話された。

読者にとっては出版社が大きいか小さいかということは関係ない。小さな出版社でも、書評に載ったり記事に取り上げられるような良質な本を出版することはできるから、もし出版という仕事に興味を持つなら、クリエイティヴなものを追求してほしい。儲かりはしないが、いい人、いい物に出会え、自分の納得のいく仕事ができる、贅沢な仕事だ、と薦められた。

「子ども会」で培った経験から

高澤さんが運営してきた「子ども会」での経験から、勉強の大切さについて話された。まず、「漢字の勉強をしっかりしてほしい」。漢字の知識は世の中に出て間違いなく使える知識であり、アルファベットなどの文字よりもはるかに頭を使う文字だからだ。また、「古典を読もう」。現代の情報交換というのは、自分の悩みを一緒に分かち合うものが多い中、古典を学ぶということは、過去の悩みや知恵を知ることができ、「過去に友達を作る」ことになる。そして、「音読をしよう」。優れた作家の文章は、音読してみると非常に読みやすいものになっている。そのような優れた文章を知ることも大切だ。

そして最後に、若い間は遊ぶことも重要だと思う。だからこそ、楽しく遊ぶ、そのために、勉強するものだ、と思って勉強してほしい、と教えられた。

質疑応答

聴講していた生徒からは、話を聞いて興味深かった点についての質問が多く出された。

―電子書籍についてはどう思う?
「電子書籍は情報を伝えるものであって、考えや思想を伝えるツールには向かない。講義風景「本」は、自分の考えを足す(傍線を引く、書き込むなど)ことができる。電子書籍は書き込み等ができない、という意味で「本」として扱うには難しい。このようなものが流行するというのはもはや壊滅的な状況といえるのではないか。」

―編集者として、著者と対立することはなかったか?
「編集者として働き始めたまだ若かりし頃、串田先生の文に訂正を促したことがある。人によっては怒られる場面だったかもしれないが、串田先生には逆に信頼され、現在に至っている。このようなことが伝わる人の本しか出してきていない。」

―『本物に出会える』とは?
「いばらない人、自分を自分以上に見せない人、ものをしっかり考えている人に出会ったとき、またはそういう人の作品に触れたとき、「本物に出会えた」と思える。」

―高澤さんの出版する本を、どういう人に読んでほしい?
「心優しく、強くなりたい、そのような志をもつ人に読んでもらいたい。」

アンケート結果

高澤さんの話については、「わかりやすかった」「楽しかった」という声がとても多く、出版界で働いていくことの難しさがよく伝わったようだった。また、前半のコミュニケーションゲームは、「話をつなげるのが難しかった」と答える生徒が大半だったが、それがこの企画の楽しさを引き立てたようだった。

ふりかえり

コミュニケーションゲーム

作文風景「バースデーリング」はことばを使わずにいかにコミュニケーションを正しく行えるか、を試すのに適当なゲームだが、実際にやってみると、自分のメッセージを相手に伝えることを考えてばかりだったり、自分の思い込みで並び順を決めてしまったりと、相手からのメッセージを適切に受け止めずに並んでしまった。その結果、間違いが発生していたようだ。コミュニケーションおいては傾聴・受容がいかに大切であるか、ということを確認することができた。

「ぐるっとストーリー」は全員が初体験だったにもかかわらず、それぞれが趣意をしっかり理解して真剣に取り組むことができたため、それぞれの完成作品をとても楽しく味わうことができた。あちこちで「あれ~こんな展開のはずじゃ…」という声が聞こえてきたことに、何かを学べる余地があった。その後の展開を見据えた冒頭を考えられた生徒の作品はやはり安心して読むことができた。

高澤さんのお話

生徒のアンケートに「わかりやすかった」「楽しかった」というコメントが多かったことが示すとおり、「本」「出版」の話をプロットにして、小学生でもわかりやすい言葉づかいで漢字の由来から坂本の幼少の頃の話まで、非常に幅広く話題を提供してくださり、生徒達は「本にはあるべき姿がある」「出版業界を守っていくことも大切なこと」ということをよく理解したようだった。出版業界でしっかりと思いを持って働いていく大変さを知ることができたが、同時に、自分のやりたいことを仕事にしていくためには強い信念や思いが必要なのだ、ということもよく理解できたと思う。