目標の設定がひとを育てる
わたしたちが安心して電車やバスに乗れるのは、行き先があって、それを知っているからです。そして、明確な行き先があるから、その交通機関を利用することを選びます。行き先の不明な電車やバスに乗ったり、行き先を決めぬまま交通機関を利用したりするときは、余暇を楽しんだり目的のない旅をするときくらいでしょう。
行き先のわからない・行き先を決めない歩みとは、まさに目的のない旅をしているようなもの。学習の姿勢もまた然り。教えられるまま受け取り、受け身の学習を続けていても、そこに自覚や責任がなければ自分が何を学び何を身につけ何ができるようになったかわからないまま、自分の評価も他人にしてもらうことしかできません。社会に出て活躍できる力は、これをいくら続けていてもまったく育ちません。大切なのは、行き先=目標を自ら決定し、自らそこに行き着くための方法を探っていくことです。
考学舎では、入会前に「何ができるようになりたいか」を本人から直接教えてもらいます。これが大きな目標になります。「作文を書けるようになりたい」「算数の文章題を自分で解けるようになりたい」など、何でもいいのです。具体的に、自分のことばで表明することで、自分がこれからどこに向かうのかが明確になります。もちろん、目標は時を経て変わっていきます。それも大切な成長の過程です。自分の成長を自分で確認し行き先を修正していくことこそ、主体的なまなびのあるべき姿であると考えます。
一年間の抱負を書き初めで
考学舎では毎年、年末には生徒も講師も一緒になって一年間お世話になった教室の掃除をし、綺麗になった教室で新しい年を迎えます。新しい年を迎えた最初の授業では、鉛筆とノートを毛筆と半紙に持ち替え、書き初めをしてもらいます。この書き初めは、それぞれ自分で考えた「今年の抱負」を、思いを込めて、一発勝負(半紙一枚きり)で書いてもらいます。これからの一年をどのような思いで過ごすか、ということに真剣に向き合って書き初めに認めていく生徒たちの背中から、毎年大きな希望が感じられます。
目標は月ごとに設定
一年の抱負を胸に抱きつつ、月の初めには「月ごと目標」を自分で設定します。「定期テスト合計◯◯点!」「早寝早起き(23時には寝て5時には起きる)」「腹筋を6つに割る!」など、それぞれ自由に設定します。大切なのは、自分と真剣に向き合い、今の自分に何が足りないのか?何ができるようになったら次の一歩を進められるのか?ということを考えることです。一ヶ月間、その目標と格闘しつつ、月末にはその目標にどれだけ近づけたか?という「達成度」を確認します。「100パーセント達成!」が理想ですが、到達できなかったときは、どんな努力が足りなかったのか?そもそも達成できる目標ではなかったのか?など、振り返りつつ、次の月の目標へとつなげていきます。
日々の目標で意識づけ
考学舎の生徒たちは、月ごとの目標を立てるばかりでなく、来舎するごとにも目標を立てます。その目標は、来舎時に全員が必ず一日一枚仕上げる「学習予定表兼報告書」に書き留めます。その日一日をぼんやりと過ごすのではなく、わざわざ足を運んだのだからこそ、意味のある一日にするために、何をして(学習して)過ごすかを最初に計画しつつ、そこに目標を伴わせます。「漢字テストで満点を取る!」「私語をいっさいしない」など、達成することよりも意識付けをすることに重点があるようにも見受けられます。
大きな計画表で、自分の予定は自分で管理
目標を考えるにも、「これからの自分」を予想できなければまともに考えられません。しかしながら、明日なにが予定されているかすらわからない生徒も少なくありません。なので、自分の予定を意識するべく、各生徒の年間予定表を教室の壁に貼り出しています。できる限り先の予定までを生徒自身が書き出し、必要に応じてアップデートしていきます。壁面いっぱいに掲示された予定表は、生徒全員の予定を一覧することができます。自分の予定のみならず、隣に座る友達の予定も見ることができ、励まし合いのことばをかけるきっかけにもなっています。「定期テストまであと何日」とカウントダウンを始める生徒もいれば、「新しい年度が始まってもうこんなに経ったんだな」とカウントアップして感慨に浸る生徒もいます。ぼんやりしていればただ流れていってしまう時間を、こうして記憶や感情にとどめていく作業も、貴重な学びの機会です。