大学入学共通テスト
試行問題と採点の分析結果

教育改革、の中心(?)ともいわれる、
センター試験廃止、大学入学共通テスト開始が、
いよいよ現在(2019年4月)の高校2年生から始まります。
2018年秋に行われた試行の採点・分析結果がでていたので目を通してみました。

私が見たのは下記WEBサイトです。
詳細御覧になりたい方はご確認ください。

大学入試センターのWEBサイト(大学入学共通テスト、平成30年度試行調査)

こちらに、問題、解答、採点の分析結果が出ています。

私は主に、国語・数学の記述式問題の採点およびその分析を確認しました。
求めていたのは思考力を測ることだったのだと思いますが、
問題と解答を見る限り、読解力や構成力が問われているようで、
実際の思考力が評価できるのかは疑問です。
ただ、記述問題が入ることで現行のセンター試験より明らかに、
受験者が「考える」ことは増える、という意味では思考力が必要となるのでしょうか。

国語について

国語の記述問題は、ヌケ・モレなく正確に文章を読み取り、
それを解答として構成する必要があります。

解答例からみると、
含まれる要素を例示し、日本語的な破綻がなければよい、というところで、
今までのセンター試験の読解である、
「正しいものを選択せよ」の選択肢問題をそのまま記述にしたような内容です。
3問あり、文字数が少ないものから順に正答率が75.7%、48.5%、15.1%となっています。
文字数が増えれば増えるほど、必要な要素が増え、
また文章としての出来栄えが問われてくることから至極当然の結果かもしれません。
思考力を問うているか、というよりは、
読解力とそれを正しく文章化する力が問われている。と感じます。

少し違和感を感じたのは、誤字脱字について、
「文意や文脈が異なるような間違いに限り減点。そうでなければ減点しない」
というところです。
確かに今回の出題の目的から考えればよいのかもしれませんが、
日本語で文章を書く際に、それでよいのか?と思うと少し不安になります。

数学について

数学の記述問題も、今まで以上にヌケ・モレのない正しさを測るものに仕上がっています。

例えば、集合の問題で、ある命題を記号を用いて解答する問題。
内容は全く難しくありませんが、
正答率は5.8%。主な誤答は集合の記号を正しく記載できていないものです。
三角関数の問題では正答率10.9%。主な誤答のトップは「tan33°」の「°」が抜けているもの。
この2問はいわゆる重箱の隅をつつくような話だと感じてしまいます。

最後の問題は、あまり得意ではない高校生が多いと思われる、図形と関数の融合問題です。
正答率は3.4%。主な誤答のトップは、
「経過時間によらず等しい」の「経過時間によらず」が抜けているもの。
これは一番本質的ではあります。
問題にも「時刻とともにどう変化するか」と問われていますから、
そこまで配慮した解答である必要を感じます。

どちらの科目でも問われているのは、
「正確に理解し、読解する力」にとどまっているのではないかと感じました。
「理解したことから何かを考えること」は問われていません。
ある個人の考えを評価することはテストにはなじまないとも思うので、
ある意味当然の結果かもしれません。
この試験を見ると、中学高校でしっかり身に着けるべきは、
正確な読解力・理解力です。
今までのセンター試験よりもはるかに正確に、この力を測ることはできるようになった、
と感じられる結果だと思います。

一方で、私学の試験を見る限り、
大学によってはすでにはるか先まで進んでいます。
小論文やグループ討論が採用されているからです。
もちろん、採点基準が明らかではないので、
出題に対し、採点がどこまで行われているかは不明ですが・・・。

個別大学での選抜と全体での学力測定は別物ですから当たり前ではあります。
大学入学共通テスト、で「思考」個人の考えを問うのは、
思想の自由などを考えても現実的ではありません。

大学入学共通テストではあくまで、
思考のベースとなる「理解・読解力と構成力」を見ます。
個別大学で、その大学の考え方に合う思考力をそれぞれ工夫して測ってください、
という区別が必要なのではないかと思います。
この役割分担についてもしっかりと広報し、
受験生がこれから社会で求められる力を
正確に理解し学べる環境ができることを祈ります。
予備校等がこれを解くための方法論だけに走れば、
思考力育成はどこかに行ってしまいます。
そうならないことを祈るばかり。